コーシー・シュワルツの不等式(Cauchy-Schwartz inequality)について解説

本記事では、コーシー・シュワルツの不等式と呼ばれる線形代数において著名な不等式について解説します。

コーシー・シュワルツの不等式とは

内積と非常に密接な関わりがある方程式で、以下で定義されます。

コーシー・シュワルツの不等式の定義

内積の定義された実ベクトル空間の任意のベクトル$\mathbf{a}$と$\mathbf{b}$が存在するとき、

$$|\mathbf{a} \cdot \mathbf{b}| \leq \| \mathbf{a} \| \| \mathbf{b} \|$$

が成立します。この式がコーシー・シュワルツの不等式です。

ただし、$|\mathbf{a} \cdot \mathbf{b}| $は二つのベクトルの内積の絶対値を表し,$\| \mathbf{a} \|$はベクトルの長さを表します。

コーシー・シュワルツの不等式における等号成立条件

次にコーシー・シュワルツの不等式における等号の成立条件を解説します。すなわち、以下の関係が成立する場合です。

$$|\mathbf{a} \cdot \mathbf{b}| = \| \mathbf{a} \| \| \mathbf{b} \|$$

この式において等号が成立する条件はベクトル$\mathbf{a}$がベクトル$\mathbf{b}$の実数倍($\mathbf{a} = c \mathbf{b}$)であることです($c$は任意の定数)。

すなわち二つのベクトルの方向が同じ(成す角度が0度),ないしは真逆(成す角度が180度)の場合に等号が成立します。

少し難しい言葉で表現すれば、このとき二つのベクトルは線形従属(Linear dependent)の関係になります。すなわち、片方のベクトルがもう片方のベクトルに従属する(独立ではない)関係になります。

コーシー・シュワルツの不等式の感覚的な理解

内積が$\mathbf{a} \cdot \mathbf{b} =\| \mathbf{a} \| \| \mathbf{b} \| \cos\theta$と表される($\theta$はベクトル$\mathbf{a}$と$\mathbf{b}$の間の角度)ことを鑑みると、$\cos\theta$の最大は$1$なので、不等式が成立しそうなことがわかります。

同様に、等号が成立する場合は、内積についている絶対値も考慮すると$\cos\theta$が$1$か$-1$(すなわち$\theta$が0度か180度)となる場合です。

例題で理解するコーシー・シュワルツの不等式

例題1

$\mathbf{a}=(5,12)$かつ$\mathbf{b}=(3,4)$のとき、コーシーシュワルツの不等式が成立することを確認せよ。

例題1の解答

内積及びベクトルの長さは以下の通り。

$$|\mathbf{a} \cdot \mathbf{b}|= |(5\times3 + 12 \times 4)| = 15 + 48 = 63$$

$$\| \mathbf{a} \| = \sqrt{5^2 + 12^2} = 13$$

$$\| \mathbf{b} \| = \sqrt{3^2 + 4^2} = 5$$

したがって$ 63 < 65 (= 13 \times 5)$であるからコーシーシュワルツの不等式$|\mathbf{a} \cdot \mathbf{b}| = \| \mathbf{a} \| \| \mathbf{b} \|$が成立する。

例題2

$\mathbf{a}=(6,8)$かつ$\mathbf{b}=(3,4)$のとき,コーシーシュワルツの不等式において等号が成立することを確認せよ。

例題2の解答

内積及びベクトルの長さは以下の通り。

$$|\mathbf{a} \cdot \mathbf{b}|= |(6\times3 + 8 \times 4)| = 18 + 32 = 50$$

$$\| \mathbf{a} \| = \sqrt{6^2 + 8^2} = 10$$

$$\| \mathbf{b} \| = \sqrt{3^2 + 4^2} = 5$$

したがって$ 50 = 10 \times 5$であるから等式が成立する.このとき,$\mathbf{a}=(6,8)$は$\mathbf{b}=(3,4)$と同じ方向を向くベクトルであり、線形従属の関係にあることが分かる。

スポンサーリンク

シェアする

フォローする