近年、放送機器展でNDI対応製品という文字を目にすることが多くなってきました。そこで今回は、NDI(Network Device Interface)とは何かについてまとめたいと思います。
目次
NDI(Network Device Interface)とは
NDI(Network Device Interface)は米国NewTek社によって開発されたロイヤリティフリーのIP向けの映像伝送規格です。
2015年のIBC(International Broadcasting Convention)という国際放送機器展で発表されたもので、2023年現在では発表から10年と経過しておらず、比較的に新しい規格であると言えます。
現在、この「NDI」に対応したカメラや映像機器の新製品が多く登場し、注目を集めています。
本記事は、この「NDI」について紹介し、理解を深めることを目的としています。
“IP向け”の映像伝送規格とは
近年、映像を同軸ケーブルなどの専用線ではなく、IP(例えばLANケーブル)を用いて送ることへの期待が高まっています。
従来、スタジオなどで映像を安定して送る(例:カメラで撮影した映像を、編集者のいる場所まで送る)場合には、SDI(Serial Device Interface)と呼ばれるビデオ伝送規格を利用して、同軸ケーブルで送るのが一般的でした。
同軸ケーブルは非常に安定して映像の伝送が行うことができますが、片方向の通信しかできず、例えば2箇所の拠点間で映像のやり取りをする場合には2本のケーブルが必要でした。
加えて有線なので配線が必要ですし、1本の同軸ケーブルの伝送距離は約100メートル程度で、伝送距離の面でも制約がありました。
そこで、近年はイーサネットなどの速度が改善されたことに基づき、IPネットワークを利用して映像を伝送することに注目が高まっています。
このIPネットワーク向けのデータ出力に対応したカメラを使えば、カメラから直接無線LANやLANケーブルに映像が出力され、ルータやスイッチを介して、編集者の元までネットワークを介して映像が届きます。
配線の煩雑さを解消できるだけではなく、映像専用の機器を使わずに汎用的なルータやスイッチを用いて映像を伝送できるようになることで、コスト削減が為されることも期待されています。
この実現のためには、IPで映像を送る際に送信側と受信側でルールを決めておかなくてはいけません。すなわち、どんなパケットを送出したのかや、どのような圧縮アルゴリズムで映像を圧縮したのか、などの情報です。このIPで映像を送る際の決め事を定めたのが、このNDIという規格です。
NDIの特徴
つまりNDIとは、IP ネットワークを経由して映像を送る際の規格を定めたものです。
例えば送信側のカメラがNDIで出力を行い、受信側のコンピュータが、NDIがどのようなフォーマットかを知っていれば、受信側はビデオを正常に受信することができます。
詳しい方はご存じかもしれませんが、このようなIPに適したビデオ伝送規格自体は、他にもいくつか存在していて、例えば過去の記事で紹介したSMPTE2110もその一つです。
そこで、違いを理解するためにNDIの特徴をもう少し詳しく見ていきたいと思います。
NDIには下記のような特徴があります。
- ビデオやオーディオ、メタデータなどの動画を構成するあらゆるデータを伝送可能
- 高品質・低遅延の圧縮伝送(ビットレートは1080/60pで、100Mbps以下を対象)
- ソフトウェアベースで、開発のためのSDKを無料で入手可能
普及に至った一番の理由は、最後の部分なのではないかと思います。ロイヤリティフリーで、開発のためのSDKに簡単にアクセスができるため、NDI対応の製品を開発することへの障壁が少ないです。
SMPTE2110との違いは?
まず、SMPTE2110との違いは、NDIは「しっかり圧縮して伝送する規格」であるということです。SMPTE2110に関しては上で紹介した記事を見ていただくと詳細がわかりますが、品質を保つために非圧縮や、それに近い大きいデータサイズでビデオを伝送する規格でした。一方、NDIはSMPTE2110と比べると、より小さいデータサイズをターゲットにしています。
これはNDIがSMPTE2110より優れているというわけではなく、この二つの規格はターゲットが異なるということを意味しています。
NDIの種類
詳しい方はご存じかもしれませんが、NDIには種類があります。
High Bandwidth NDIと呼ばれるNewtek社の独自方式(DCTベース)で圧縮を施すタイプのものと、NDI|HXと呼ばれるAVC(H.264)をベースに高圧縮が可能なものです。
High Bandwidth NDIは1080/60pに対して100Mbps程度のデータレートとされていて、要するに使用する帯域幅が広く、ビットレートが大きめになります。
一方NDI|HXは圧縮率が高く20Mbps以下のビットレートを実現できます。
ただし、High Bandwidth NDIの方が、遅延が少ないなどの利点もあるため、一概にNDI|HXが優れているとは言い難いですが、最近はNDI|HXの最新バージョンであるNDI|HX3と呼ばれるものが出てきて、どちらかというと2023年現在ではNDI|HXの方への期待がより高まっている感じがします。
このあたりの違いは非常に細かいので、今回の記事では扱わず、今後別の記事でまとめたいと思います。
まとめ
NDIとは、ビデオをIPを利用して送る場合の伝送規格の一つです。現在対応製品がどんどん増えてきているので、今後より身近な存在になっていくでしょう。